7月21日に「骨太の方針2026」が閣議決定されました。
ニュースで名前を聞いた社長も多いと思います。
でも、中身まで読んだ方は少ないのではないでしょうか。
かちけん


結論から言います。
今年の骨太の方針は、建設会社にとって「かなりの追い風」です。
副題は「『責任ある積極財政』元年」。
これまでの「とにかく歳出を抑える」から、
「必要な投資には国が前に出てお金を出す」へと、大きく舵を切りました。
全部で40ページ近くある資料です。
この記事では、骨太の方針2026の全体像(6つの柱)と建設会社に関係が深いところだけを3つに絞って解説します。
そもそも「骨太の方針」とは?
正式な名前は「経済財政運営と改革の基本方針」です。
政府が毎年6〜7月ごろに決める、国の経済と予算の大きな方向性です。
ポイントは、翌年度の予算づくりの「土台」になることです。
国の予算は、だいたい次の流れで決まります。
- 夏(6〜7月):骨太の方針で「何にお金を使うか」の方向性を決める
- 8月末:各省庁が、方針に沿って来年度の予算を要求する
- 12月:来年度の予算案がまとまる
- 翌年4月〜:予算が動き出し、公共工事の発注や補助金の公募が始まる
つまり、骨太の方針は「来年、国のお金がどこに流れるか」の予告編なのです。
建設会社の社長が骨太の方針を読む4つのメリット
- 仕事量の見通しが立つ
公共工事の予算が増えるのか、減るのか。どの分野に重点が置かれるのか。
先が読めれば、人の採用や機械の購入を判断しやすくなります。 - 補助金の準備を先回りできる
方針に書かれた分野は、翌年度の補助金として形になることが多いです。
公募が始まってから準備しても、締切に間に合わないことがあります。 - 価格交渉の「後ろ盾」になる
「価格転嫁を進めるのは国の方針です」と言えると、元請や発注者との交渉で心強い材料になります。 - 銀行や取引先への説明に説得力が出る
経営計画に国の方向性を盛り込めば、「時流をつかんでいる会社」という印象を与えられます。






先に読んでおけば、仕事の流れを一歩早くつかめるわけです。
まずは全体像:6つの柱
建設業の話に入る前に、全体をざっと押さえておきましょう。
難しい言葉は、かみくだいて説明します。
① 成長戦略:国が前に出て「投資」する
AI・半導体、防衛、エネルギー、防災・国土強靱化など、17の分野に国と民間で集中的にお金を投じます。
目標は、2040年度に国内投資250兆円です。
これまでの日本は「投資不足」が続き、成長が伸び悩んできました。その流れを変えようというわけです。
→ 建設会社には:防災・国土強靱化が重点分野に入ったのが大きなポイントです。
② 財政目標:「借金ゼロ」より「借金の割合を下げる」
これまで国は「プライマリーバランス(PB)の黒字化」を目標にしてきました。
PBとは、その年の政策に使うお金を、その年の税収でまかなえているかという指標です。家計でいえば「今月の生活費を今月の給料で払えているか」です。
今回は、毎年の黒字化に必ずしもこだわらず、「経済の大きさに対する借金の割合」を下げていくことを中心に据えました。
会社でいえば、「借入をゼロにする」より「売上を伸ばして借入の比率を下げる」考え方に近いです。
③ 予算の作り方:「補正予算頼み」をやめる
国の予算には、年度の初めに決める「当初予算」と、年度の途中で追加する「補正予算」があります。
これまでは補正予算に頼る傾向が強く、「年度末に急に仕事が出てくる」原因にもなっていました。
今後は、毎年必要な事業は当初予算に入れます。
さらに、投資のための別枠「強く豊かな日本」投資枠を新しく作り、複数年にわたる計画的な投資を進めます。
④ 賃金:物価より少し上回る賃上げを「当たり前」に
物価の上昇を年1%程度上回る賃上げを、社会の常識として定着させる方針です。
最低賃金は、全国平均1,500円を「遅くとも2030年代前半」に達成するとしています。
これまでの「2020年代中」から、少し時期がずれました。
→ 建設会社には:人を確保するための賃上げは、今後も避けて通れません。
⑤ 社会保障:現役世代の負担を軽くする
医療・介護などの社会保険料率の上昇を止め、引き下げを目指す方針です。
そのために、70歳以上の医療費の窓口負担の見直しなども検討されます。
→ 建設会社には:保険料は会社も半分負担しているので、実現すれば会社の負担軽減にもつながります。
⑥ 安全保障・外国人政策
防衛力の強化や、サイバー対策、エネルギーの安定確保が盛り込まれています。
外国人政策では、ルールを守らない一部の人への厳しい対応と、日本語教育の強化の両方を進めます。
外国人の土地取得のルールづくりも始まります。
→ 建設会社には:外国人材を受け入れている会社は、制度の変更に注意が必要です。






建設会社の社長が押さえるべき3つのポイント
ポイント1:公共工事の「価格転嫁」が100%実施へ
一番インパクトが大きいのはここです。
国や自治体が発注する仕事(官公需)について、
2027年度末までに、次の取り組みを「100%実施」すると明記されました。
- 実勢価格を踏まえた予定価格の作成
- 低入札価格調査制度、または最低制限価格制度の導入・適用












ポイント2:公共投資は「安定的に」、評価のものさしも変わる
今回、建設産業についてわざわざ一段落が割かれています。
ポイントは次の3つです。
- 中長期の見通しを持った「安定的・持続的な公共投資」を進め、必要な事業量を確保する
- 労務費や資材高騰を考慮した、適切な価格転嫁を促す
- 公共事業の評価で、費用便益比(B/C)に頼りすぎず、防災・国土強靱化や地域の暮らしを守る観点も含めた「総合評価」に見直す












もう一つ、予算の組み方も変わります。
補正予算頼みをやめて、恒常的な事業は当初予算に入れる方針です。
年度末に慌てて仕事が出てくる「山谷」が、緩やかになることが期待されます。
ポイント3:強靱化・インフラ維持・中小企業の「稼ぐ力」
3つ目は、仕事の中身と会社の支援に関わる話です。
- 防災・国土強靱化:防災庁を設置。国土強靱化の中期計画を、新しい「強く豊かな日本」投資枠で進めます。防災・国土強靱化は、国の17の重点投資分野にも入りました。
- インフラの維持管理:メンテナンスを「壊れてから直す」から「予防保全型」へ転換します。空き家対策や住宅ストックの活用も明記されています。
- 中小企業支援:「中堅・中小企業の稼ぐ力強化戦略」にもとづき、売上1〜10億円の企業から小規模事業者まで幅広く支援。省力化投資の補助金も拡充されます。






浮かれる前に:注意しておきたいこと
もちろん、いいことばかりではありません。
まず人件費です。
政府は「物価を年1%程度上回る賃上げ」を社会の当たり前にする方針です。
最低賃金の全国平均1,500円も「遅くとも2030年代前半」に達成するとしています。
時期は少し後ろにずれましたが、賃上げ圧力が続くことは変わりません。
次に働き方です。
変形労働時間制や勤務間インターバルなど、労働時間のルールの見直し議論も始まります。
天候や工程に左右される建設業にとっては、目が離せないテーマです。
そして、方針はあくまで方針です。
具体的な金額は、年末の来年度(令和9年度)予算で決まります。






今のうちにやっておきたい3つのこと
- 見積の根拠を整える
労務費・資材費の上昇を、数字で示せるようにしておきましょう。価格転嫁の交渉は「根拠」が勝負です。 - 省力化・DXへの投資を計画する
補助金が拡充される今がチャンスです。ドローン測量、ICT建機、施工管理アプリなど、自社に合うものを洗い出しておきましょう。 - 地元自治体の動きをチェックする
最低制限価格の導入や、強靱化の計画など。発注者側の変化をいち早くつかみましょう。
まとめ
「責任ある積極財政」は、裏を返せば
「投資して成長する会社を、国が応援する」というメッセージです。
この追い風を待つのではなく、自分から捕まえにいきましょう。






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