「社長が“社長の仕事”に専念できる会社へ」——幹部教育から始まった組織の自走化と、10年後の承継構想
導入前の課題は「同じ方向を向く組織」と「レベルアップ」
聞き手:まず、柏村さんのコンサル導入当初、会社としてどのような課題があったのでしょうか?
倉持社長:「悩み」というよりは目標に近いのですが、社員一人ひとりが仕事をできるようになり、全員が同じ方向を向いて働ける会社にすることです。会社のレベルを一段階、二段階と引き上げることを目指してお願いしました。
聞き手:当時は、社長が現場に対して強く指示を出していた状況もあったのでしょうか?
倉持社長:基本的には、二人の役員を通して「こうした方がいいんじゃない」と伝えていました。
以前は私が直接強く言うこともありましたが、それで直ることもあれば直らないこともあり、言い過ぎると社員も言われ慣れてしまうところがありました。
聞き手:だからこそ、外部の人から指摘してもらう方が効果的でしたか?
倉持社長:そうですね。柏村さんから「他の会社はこうやっています」「うまくいっている会社はこうしています」と客観的に言われることで、社員の認識も変わりました。
外注から内製化へ。組織化が「避けて通れないフェーズ」に

聞き手:いよいよ組織づくりが必要だと感じたきっかけは何ですか?
倉持社長:フィリピンからの実習生を受け入れるタイミングと、外注に多く頼っていた時期が重なったことです。
外注さんは基本的に現場へ直行直帰なので、段取りはすべて自分たちでやるしかありません。その結果、役員二人の負担が大きくなり過ぎてしまいました。
そこで役員の一人と話し、「外注はやめて、これからは内製化しよう」と決めたのです。
聞き手:具体的にはどう進めていきましたか?
柏村:最初に取り組んだのは目標の設定です。「どこを目指すか」を定め、そのために「何をやるか」を整理し、現在はその具体策に取り組んでいる段階です。
人事評価制度づくりも、その取り組みの一つです。最初の2〜3ヶ月は、社内の関係づくりも含めて丁寧に進めました。
取り組みの中核:目標設定から、理念・評価・計画へ
聞き手:社員全員が同じ方向を向くために、何から着手したのでしょう?
柏村:まずゴールを「ここを目指します」と明確にしました。そして、仕事をしていく上で「何を大事にするか」をみんなで決めていきました。社員からも意見を吸い上げて、役員で言語化していきました。
今回の取り組みの流れは、以下のとおりである。
- 支援当初:役員はプレイヤーとしての業務が中心で、経営にはノータッチ
- 毎月の経営会議を開催し、役員教育(役割・経営数字)を実施
- ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)作成
- 日光での経営合宿を実施し、社長・役員二名で5か年経営計画を策定
- 5年計画に基づき、役員会議で人事評価制度の構築を推進
- 箱根で、社員研修旅行を兼ねた経営計画発表会と人事評価制度の説明会を実施
- 従業員が自己評価 → 役員が上司評価
- 面談・対話を通じて「今後何に力を入れるか」を擦り合わせ、会社と個人の方向性を揃える取り組みへ
聞き手:役員の方の負荷も大きかったのではないですか?
柏村:役員二名には負担のかかるプログラムでしたが、しっかりやり切っていただきました。その結果、従業員アンケートも上々で、研修旅行の満足度は100%、人事評価の納得度も100%、モチベーションアップは90%という結果でした。倉持社長からも「やってよかった」との総括をいただきました。
変化の要因:「役員二名の意識と行動」が動いたこと

聞き手:支援導入後、どのような社内変化がありましたか?
倉持社長:「自分たちが何をやらなければいけないか」を、実習生も含めて全員が明確に理解してくれるようになったと思います。
聞き手:役員の方の変化もあったと伺いましたが、どんな風に変わりましたか?
倉持社長:役員二人の意識がかなり変わりました。逐一口を出すことがなくなり、現場でも工場でも「こうした方がいい」と言うよりも、自分たちで考えてやるようになりました。
聞き手:なぜ、そこまで意識が変わったと感じますか?
倉持社長:やはり外部の専門家である柏村さんからの指摘によるところが大きいです。
だからこそ、私はその分グッと堪えて、なるべく口を出さないようにしています。
柏村:当初、役員のお二人はどちらも「自分が頑張るプレイヤー型」で、チームとして機能させる点にはまだ改善の余地があると感じていました。逆に言えば、役員二名の意識や行動が変われば、組織はうまく回り始めるだろうと考えました。
聞き手:具体的には、どんなことを意識して働きかけたのでしょう?
柏村:まずは、メンバー育成も役員の仕事であることなど、「役員の役割」を知ってもらうことから始めました。
また、経営理念づくりや人事評価制度づくりなどのプロセスを通じて、「役員としてこういうことを考える必要があるんだ」という気づきを得てもらうようにしました。その際、こちらから答えを渡すのではなく、どうしたらよいかを自分の頭で考えてもらうことを意識していました。
聞き手:結果として、役員二名が変化を牽引したということですか?
柏村:はい。二人が率先していろいろ変えていってくれたことで、組織が良い方向に機能し始めたと感じています。
社員にも「良い方向に変えていく」メッセージを一貫して発信
聞き手:幹部だけでなく、社員側への働きかけはどのように?
柏村:社員の皆さんに対しても、「会社をいい方向に変えていく」というメッセージを伝えることはかなり意識していました。仕組みとしてはまだこれからの部分もありますが、「社長がいなくても組織が自走する土台」は整いつつあると思います。
コンサル成果:「組織の自走」と「社長が社長の仕事に専念」

聞き手:社長ご自身の働き方には、どんな変化がありましたか?
倉持社長:おかげさまで、私は以前と比べて暇になった分、本来やるべき仕事に専念できるようになりました。
聞き手:その一言は非常に象徴的ですね。「暇になった=現場を放置した」ではなく、会社が組織として自走し始めたということ。経営者として理想的な状態だと思います。
今回の支援の成果を整理すると、次の二点に集約される。
- 社長が“社長の仕事”に専念できるようになった
- 組織が自走しはじめた(役員が先頭に立ち、現場が自分で考えて動く)
社内変化:社長賞や社内行事で、参加型の文化へ
聞き手:文化づくりとして、社内行事やアイデア募集も印象的でした。
倉持社長:去年、初めて社員旅行を実施しました。それまでの10年間、社員旅行も忘年会も一度もやったことがなかったんです。
それから月に1回アイデア募集企画を行い、採用したアイデアは実際に実行しています。忘年会・総会では社長賞も授与しました。
聞き手:12月には、10年目で初の総会も開催されたとか。
柏村:総会では、新たに作成したMVVをもとに「自分たちは何をすればよいか」を社員自らが考える場が設けられ、社長自らファシリテーターとして社員の意見を引き出していました。
私も参加させていただきましたが、社員参加型のとても良い会でした。
補助金活用で工場建設・大型設備投資を実現

聞き手:補助金活用を含め、設備投資も並行して進みましたね。
倉持社長:柏村さんには、補助金の申請を通じて会社を大きくしてもらった面もあります。補助金を活用してまず工場を建て、機械もたくさん導入できました。
そして今は組織づくりの支援もお願いして、ここまで成長してきました。
聞き手:今後の投資計画として、溶接ロボットやレーザー加工機の導入も構想されているとか。
倉持社長:溶接ロボットは今年の3〜4月ごろに導入予定です。狙いは、時代の流れである人手不足・採用難への対応と、価格競争で他社に勝てる体制づくりです。
柏村:申請時の試算では、「一人分の作業時間が半分になる」ほどのインパクトがありました。削減した時間は、より付加価値の高い業務に振り向ける計画です。
聞き手:他にもありますか?
倉持社長:レーザー加工機です。「形鋼」という材料の加工で、データを読み込ませたらその通りに切断加工する機械です。
現在は一次加工業者に依頼していますが、そこの納期が間に合わず、受注をお断りすることもあります。自社で加工できれば納期をコントロールでき、より多くの仕事を受けられるようになる。それを目指しています。
10年後のゴール:次世代への承継も見据えた強い会社づくり
聞き手:10年後、会社がどのような形になっていたら「成功した」と言えるとお考えですか?
倉持社長:私が代表の座を次世代に譲り、経営を完全にバトンタッチできている状態です。それが実現できていれば、会社は次のステージに進めたと捉えています。
聞き手:オーナーとして残るのではなく、完全に経営を引き継ぐという意味でしょうか?
倉持社長:はい。会社は役員へ承継し、私は経営から退くつもりです。単に辞めるということではなく、次世代が主体となって会社をさらに発展させていける体制を整えたいと考えています。
聞き手:そのために、会社の体力をさらに強化していくご予定なのですね。
倉持社長:まさにそこが私の役目です。多少の景気変動では揺らがない、しっかりとした基盤を持つ“強い会社”に育ててから次世代へ渡したい。私が代表である間に、未来の経営陣が安心して舵取りできる状態まで会社を鍛え上げるつもりです。
売上目標「10億円」——同い年の経営者との出会いが火をつけた

聞き手:会社の中期的な目標を教えてください。
倉持社長:売上高10億円の達成を目標に掲げています。
聞き手:なぜ「10億」だったのでしょうか?
倉持社長:1年前に、同い年で同業の経営者と知り合いました。中卒で足場から叩き上げてきたという経歴も同じで、その方の会社がまさに売上10億円だったからです。身近な人が達成しているのを目の当たりにして悔しくなり、「自分もいける」と思いました。
聞き手:事業計画にも反映していますか?
倉持社長:ええ。ただ、もう少しブラッシュアップが必要なので、そこは次のステップです。
1年余りを振り返って
聞き手:この1年余りを振り返って、コンサルを導入して良かったと思いますか?
倉持社長:もちろんです。導入前とは全く違います。会社が変わりましたし、私自身も変わりました。時間に余裕ができた分、新しいことにも取り組めるようになりました。
正直、最初に見積もりを見たときは「高いなぁ」と思いましたが、実際にはまったくそんなことはありませんでした。
自分たちだけでは絶対にここまでできなかったので、本当にお願いして良かったです。
最後に:「みんなで作る会社を目指して」

聞き手:最後に、柏村さんから社長へメッセージをお願いします。
柏村:いつもお話ししていますが、「みんなで作る会社」を一緒に実現していければと思っています。引き続きお力になれればと思いますので、よろしくお願いいたします。
結び:「社長が社長の仕事」をし、組織が走り出す
今回の支援の狙いは、「制度を作ること」だけではない。幹部が自ら考え、動き、人を育てる側へと変わることにあった。そしてその変化が社員の行動を変え、社内のコミュニケーションを増やし、社長の時間を生み出した。本事例は、まさにその好例といえる。
社長の「暇になった」は、単なる余裕ではない。
それは、意思決定・投資・承継といった、社長が本来担うべき“社長の仕事”へと重心が移った証なのである。

